弁護士コラム

2017.01.19更新

自分の死後のために遺言書を残したいという方は多いのではないでしょうか。
自分が亡くなった後に、親族間で争いが起こることは誰も望まないでしょう。
遺言書の作成は、親族間の相続争いを未然に防ぐための有効な手段になります。

 

ただ、自分で遺言書を作ろうと思っても、実は遺言書の作成には非常に厳しいルールがあります。
そこで、今回は、自分で遺言書を書く場合のルールについて説明します。

 

 

自筆証書遺言の書き方
自分で遺言書を書く場合の方式については、民法968条で定められています。
このルールを守らなければ、遺言書は無効となってしまいます。

 

①全て自分で筆記する
遺言書は、全文、自分で書かなければなりません。
パソコン等で本文を入力し、署名のみ自分でするという方式では、遺言書として無効となります。
遺言書の本文、日付、署名、全てを自分で書かなければなりません。
これは、遺言の内容が全て本人の意思によるものであることを確認するためです。

 

②日付を必ず記入する
日付も自筆で書くことが必要です。
日付の記載のない遺言書は無効です。
「平成●年●月吉日」というように、日を特定せず「吉日」とのみ記載した遺言書について、日付の記載を欠くものとして無効と判断した判例があります(最高裁昭和54年5月31日判決)。
それで無効になってしまうの?と驚かれる方も多いと思います。
このように、裁判所は、遺言書の効力について、非常に厳格に判断しているのです。

 

③必ず押印すること
印鑑を押していない遺言書も無効となります。
必ず印鑑を押しましょう。
最近、押印の代わりに「花押(かおう)」という伝統的なサイン(自分の氏名等を図案化したもので、戦国武将なども使用していた)を記載した遺言書について、押印がないとして無効とした最高裁の判決が出されました(最高裁平成28年6月3日判決)。
この判例で問題となった遺言書の作成者は、他の文書などでも印鑑の代わりに花押を用いてきたようですが、それでも印鑑を押したものではないという理由で無効とされました。
かなり厳格ですね。

 

④修正する場合には要注意
加除その他の変更を加える場合には、遺言者がその場所を指示し、変更した旨を付記し、この付記した部分にも署名を加え、変更箇所に押印をしなければなりません。
このような方法による修正がなされず、修正前後で、内容が矛盾するような場合には、遺言書は無効となってしまいます。
このように、修正するのにも厳格な方式が定められているので、一度間違えたら、全文書き直すようにするのが確実ですね。


このように、遺言書を自分で書くためには厳格なルールが定められています。
さらに、自筆証書遺言の場合には、遺言者の死後、遺言書の保管者が家庭裁判所で「検認」という手続きを行わなければならないことや、遺言書が封印されている場合には、家庭裁判所で開封しなければならないことなど、そのほかにも厳しいルールが定められているのです。
自筆証書遺言を作成する場合には、このようなルールを理解した上で、作成する必要があります。

 


公正証書による遺言
自筆証書遺言には、これまで書いてきたように厳しいルールがあり、ルールが守られていないと無効となって、せっかく遺言書を書いたのに、自分の意思どおりの相続がなされないというリスクがあります。
また、自筆証書遺言では、遺言書を作成していたにもかかわらず、その後、失くしてしまった場合や誰かに破棄されてしまったような場合、遺言書はなかったものとされてしまう危険があります。

このような自筆証書遺言のリスクを回避するためには、公正証書遺言という方式があります。

 

公正証書遺言とは、遺言をする人が公証役場へ行って、公証人に遺言書を作成してもらう方法です。
この方法によれば、せっかく作成した遺言書が無効となってしまうということはほぼありません。
また、公正証書遺言の場合には、遺言書の原本が公証役場に保管され、遺言者にはその正本と謄本が交付されます。
仮に、遺言者が正本や謄本をなくしてしまったとしても、公証役場に、改めて謄本を交付してもらうことができるのです。
相続人であれば、遺言者の死後、遺言書があるかどうかを公証役場に問い合わせることもできます。
したがって、せっかく作成した遺言書がみつからないという事態を避けることもできるのです。

 


このように遺言書には様々なルールや方式があります。
どのように遺言書を作成していいかわからない場合には、弁護士にご相談ください。
遺言書をどのような内容にしたらいいかわからないという場合にも、ご相談者様の家族構成や財産状況、それまでの親族間の関係などにあわせて、助言・提案させていただきます。


また、最近では、自分の財産の一部を慈善団体に寄付したいという方も増えています。
私が所属する日本環境法律家連盟では、遺言によって環境団体等へ寄付をしようと考えている方を対象にした「みどりの遺言」というプロジェクトを行っています。
ご興味のある方は、みどりの遺言のホームページも是非ご覧ください。

 

 

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投稿者: 弁護士 吉田 理人

2016.11.28更新

家族が亡くなった場合、財産をどう分けたらいいのか?
そんな疑問をもたれたことはありませんか。

そこで、今回は相続の基本・相続の割合について説明します。

 

 

1 民法で相続割合が決められている

 家族や親族が亡くなった場合に財産をどのように分けるかという基準が民法で定められています。これを法定相続分といいます。
 もし、亡くなられた方が遺言を作成していない場合や特定の相続人に多くの財産を相続させるべき特別な事情がなければ、この民法で定められた法定相続分にしたがい、亡くなられた方の財産が分けられることになります。

 逆にいえば、自分が亡くなったとき、法定相続分に従った分け方をしてほしくないと考えている場合には、遺言書を作成しておけば、法定相続分ではない財産の分け方を実現できます。
 例えば、長男には、教育のためなどに多くのお金をかけてきたが、次男には、あまりお金をかけてこなかったので、自分が亡くなったときには、多くの財産を次男に渡したいとか、長女は自分の世話をたくさんしてくれたので、長女に多くの財産を渡したいなどの希望がある場合には、遺言書の作成をおすすめします。
 遺言書の作成方法については、また後日、説明をしたいと思います。

 

 

2 誰が財産を相続できるの?
 家族・親族のうち誰が財産の相続をできるかというのも民法で決められています。

 

① 配偶者・子ども
 亡くなられた方の配偶者(妻または夫)と子どもには常に相続権が認められます。
 その相続分(相続割合)は、他にどのような親族がいるかによって変わります。

 

② 親
 亡くなられた方の親は、亡くなられた方に子どもがいない場合に、相続権が認められます。
 亡くなられた方に子どもがいる場合には相続権は認められません。配偶者はいるが、子どもはいないという場合には、親にも相続権が認められます。

 

③ 兄弟姉妹
 亡くなられた方の兄弟姉妹は、亡くなられた方に子ども、親がいない場合に相続権が認められます。
 亡くなられた方に子ども又は親がいる場合には相続権は認められません。配偶者はいるが、子どもも親もいないという場合には、兄弟姉妹にも相続権が認められます。

 

 

3 実際の法定相続分
 事例にあわせて、実際にどのような相続分になるか見てみましょう

 

【ケース① 配偶者1人・子ども2人の場合】
 配偶者と子どもは、それぞれ2分の1ずつの割合で相続します。
 子どもが複数いる場合には、子どもに割り当てられた2分の1の相続分を、それぞれ均等の割合で分け合います。
 したがって、亡くなられた方に配偶者1人、子ども2人がいる場合には、その法定相続分は以下のとおりになります。

 

  配偶者・・・財産の1/2
  子ども・・・財産の1/4
  子ども・・・財産の1/4

 

 子どもが3人の場合は、子どもの相続分は1/6ずつ、子どもが4人の場合は、子どもの相続分は1/8ずつ、というように子どもの人数が増えると、子ども1人あたりの相続分は減ることになります。

 

 

【ケース② 子ども2人のみの場合】
 亡くなられた方の配偶者が既におらず、子どものみという場合には子どもが全ての財産を分け合います。
 亡くなられた方に、子ども2人のみがいる場合の法定相続分は以下のとおりとなります。

 

  子ども・・・財産の1/2
  子ども・・・財産の1/2

 

※ 亡くなられた方の親や兄弟姉妹がいる場合にも、この場合、親や兄弟姉妹に相続分は認められません

 

 

【ケース③ 配偶者1人・親1人の場合】
 亡くなられた方に子どもがおらず、配偶者1人と亡くなられた方の実親1人がいる場合には、実親にも1/3の相続権が認められます。
 この場合の法定相続分は以下のとおりとなります。

 

  配偶者・・・財産の2/3
  親・・・・・財産の1/3

 

 亡くなられた方の実親が2名とも存命の場合には、その相続分はそれぞれ1/6ずつになります。

 

 

【ケース④ 配偶者1人・兄弟姉妹1人の場合】
 亡くなられた方に子どもと親がおらず、配偶者1人と亡くなられた方の兄弟姉妹1人がいる場合、兄弟姉妹にも1/4の相続権が認められます。
 この場合の法定相続分は以下のとおりとなります。

 

  配偶者・・・3/4
  兄弟姉妹・・1/4

 

 兄弟姉妹が複数いる場合には、1/4の分の相続分を、それぞれ均等の割合で分け合います。したがって、兄弟姉妹が2人の場合には、それぞれ1/8の割合で相続することになります。

 

 

4 まとめ
 相続分は、亡くなられた際の家族構成によって変わります。家族・親族の中に既に亡くなられた方がいる場合や、家族・親族の数が多い場合など、相続が複雑になるケースもよくあります。
 今回は、基本的なケースのみをまとめていますので、複雑なケースでは、より詳しい説明が必要になります。

 家族・親族が亡くなったけど、財産をどのように分けたらいいかわからないという場合には、まず弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

 

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